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低炭素・循環型社会の形成促進に向けて

 

   地球温暖化問題が深刻さを増すなか、低炭素・循環型社会の形成促進は緊急課題です。日本郵便株式会社が2000年度からの5年間の計画で実施した「カーボンオフセット年賀はがき」寄附金によるカーボンオフセット事業助成プログラムは、カーボン・オフセットの啓発・普及に大きな成果を果たし、カーボン・オフセットの社会への浸透に大きな役割を果たしました。また併せて実施された地球温暖化防止活動事業助成プログラムも高い評価を得ています。人類の重要課題の一つである地球温暖化を抑制し、将来の世代に安心して生活できる地球を引き継ぐために、これらの取り組みの社会的意義は、今後より一層高まると思われます。

   地球温暖化問題への対処には、温室効果ガス(GHG)の排出量削減と併せて吸収量増加が必須です。京都議定書は農業・森林分野のみに炭素吸収の算定を認めており、森林分野が炭素吸収の主軸を担う一方、農業分野での炭素貯留(吸収)も期待されています。農業分野では、農地管理により土壌炭素量を増加させた場合、その分のCO2吸収量を国のGHGから差し引くことが、京都議定書により認められています。なお、必ずしも土壌炭素量を増加させる必要はなく、減少の程度を和らげることでも、CO2を吸収した勘定になります。算定ルールでは、基準年(1990年)と約束期間(第1約束期間:2008年~2012年)の、土壌炭素の変化量どうしを比較する方式で算定するので、基準年の排出(=土壌炭素量の減少)量が大きく、約束期間の排出量がそれよりも小さい場合は、排出(=土壌炭素量の減少)し続けていても、「貯留(吸収)」として扱われます。つまり、土壌炭素量を増やすことが難しい場合、減るのを食い止めても評価される仕組みです。なお、農地の適切な管理により農地土壌が炭素を貯留できることが既に実証されています。具体的には、第1約束期間において、カナダ、デンマーク、スペイン、ポルトガルの4ヵ国が、不耕起・省耕起・作付管理・制度施肥調整等による農地管理により、基準年(1990年)比で110 ~610 kgCO2/haの炭素貯留を報告しました。またカナダでは農地土壌の炭素貯留を対象としたカーボン・オフセット制度の導入も始まっています。家庭菜園や都市近郊の市民農園等が広がりを見せる中、農地は市民の生活において身近な存在です。農地土壌における炭素貯留の算定には、土壌特性・土地利用変化・気象・営農活動等の様々な要素が影響するとされ、炭素貯留の算定に課題を抱えてきました。しかし、2013年10月に市民が簡易的に炭素貯留を算定できる『土壌のCO2吸収量「見える化」サイト』(http://soilco2.dc.affrc.go.jp)が独立行政法人農業環境技術研究所から公開されるなど、市民が農地土壌における炭素貯留の取り組みに参加できる素地は整いつつあります。

  世界におけるGHG排出量の約30%が農林業由来と言われ、そのうち農業由来は約10%とされています。地球温暖化問題への対処には、温室効果ガス(GHG)の排出量削減と併せて吸収量増加が必須ですが、日本郵便株式会社の取り組みが功奏し、森林分野におけるカーボン・オフセットの啓発・普及等が進み、社会的意義もより一層高まっています。一方、農地の適切な管理による炭素貯留の取り組みは緒に就いたばかりですが、カナダでは農地土壌の炭素貯留を対象としたカーボン・オフセット制度の導入も始まっており、社会的な関心が集まりつつあります。

活動の背景​

 

カーボンプールに社会的な関心が集まりつつあります

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